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外国人雇用トラブルと不法就労助長罪
~在留資格と業務内容が合わないときに弁護士に相談すべき理由~

外国人材の活用が当たり前になった現在、「在留資格と実際の業務内容が合っていない」ことは、どの業種・規模の企業にも起こり得るリスクです。このような状況は、単なる「書類上の不備」で済む話ではありません。最悪の場合は、逮捕・勾留、刑罰、マスコミよる報道などの事態に発展します。

この記事では、

  • なぜ在留資格と業務内容のズレが危険なのか
  • 在留資格制度の基本と、よくあるズレのパターン
  • 実際に問題となった事件
  • 不法就労助長罪に問われないための予防策
  • すでにズレが発覚したときの事後対応

 

を、中小企業の経営者・労務担当者・監理団体・登録支援機関の方に向けて解説します。

在留資格と実際の業務内容が合っていないことのリスク

1 事業者側の刑事罰・逮捕のおそれ

外国人に「在留資格の範囲外」の仕事をさせた場合、外国人労働者本人だけでなく、企業も、逮捕・勾留や刑罰などの刑事責任を問われるリスクがあります。その中心になるのが、出入国管理及び難民認定法(入管法)73条の2に定められた不法就労助長罪です。

条文上、この罪に当たると、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金(またはその併科)という重い処罰の対象になり得ます。

  • 令和6年6月21日、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(またはその併科)に改正、令和9年4月1日に施行予定。

 

また、同条2項では、「知らなかった」は原則として許されない(ただし過失がなければ例外的に許される)とされており、

  • 「ビザがあると言っていたから大丈夫だと思った」
  • 「人材会社が大丈夫と言っていた」
  • 「在留カードは見ていないが、長く日本にいると言っていた」

といった言い訳は通用しません。
したがいまして、在留資格の確認・管理は、会社側の責任で行うべき義務と考えるべきです。

さらに、入管法73条の2は不法就労助長罪の適用対象を「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」(同第1号)としています。事業活動に関し」と規定しており、「雇用」であることを要件としていません。

そのため、派遣元だけでなく派遣先企業や、業務委託先・再委託先で、実態として指揮命令している企業にも適用され得る点に注意が必要です。

2 行政処分(受入れ停止・認定取消しなど)

刑事罰だけではありません。技能実習や特定技能を受け入れている企業・監理団体・登録支援機関の場合、不適正な受入れが発覚すれば、

  • 技能実習の受入れ停止
  • 監理団体としての認定取消し
  • 特定技能所属機関としての届出受理拒否・指導・勧告・公表

 

などの行政処分に発展する可能性があります。

また、公表やマスコミの報道により世間から、一度「問題のある受入れ機関」という烙印が押されると、

  • 新たな外国人材の採用が困難になる
  • 取引先・金融機関からの信用が落ちる
  • 採用市場で「ブラックな会社」と見られてしまう

など、ビジネス全体の根幹を揺るがしかねません。

3 損害賠償リスク

在留資格の範囲を超えた業務をさせた結果、「外国人本人の在留資格が取り消され退去強制になった」「長期にわたり不適切な労働条件で働かされていた」といった事情があれば、外国人労働者側から企業に対して、

  • 未払賃金・残業代請求
  • 不法行為に基づく損害賠償請求

 をされるリスクもあります。

また、紹介会社・監理団体・登録支援機関との契約関係によっては、

  • 契約違反や説明義務違反を理由とする企業側からの損害賠償請求
  • 逆に、受け入れ企業側が契約違反を問われ、損害賠償請求を受ける

といった紛争に発展することも考えられます。

在留資格制度とは?

1 「一人一資格」が原則

日本に中長期在留している外国人は、原則として一人につき一つの在留資格を持っています(いわゆる「一在留一在留資格の原則」)。

この在留資格は、「日本でどのような活動をしてよいか」を示す滞在許可のラベルのようなものです。

2 在留資格の範囲でしか報酬を得られない

入管法19条では、外国人が日本で報酬を得て働くことについて、

  • 原則として、自分が持っている在留資格の範囲内でしか働けない
  • 例外的に「資格外活動許可」を受ければ、一定範囲のアルバイト等が可能

とされています。

つまり、「日本にいるから」「在留カードがあるから」働いてよいのではなく、「その在留資格で認められた活動だけが原則として許される」ということです。

3 就労系と非就労系

在留資格は29種類ありますが、大きく分けると、

  • 「就労系」在留資格
    (例)技術・人文知識・国際業務、経営・管理、介護、特定技能、技能実習 等
  • 「非就労系」在留資格
    (例)留学、家族滞在、短期滞在 等

に分かれます。

非就労系の在留資格の多くは、原則として「報酬を得る活動」はできず、例外的に「資格外活動許可」を得た場合に限り、一定時間内のアルバイトが認められるという形になっています。

 

 

在留資格ごとに認められる活動内容と、よくある「ズレ」のパターン

1 代表的な就労系在留資格

(1)技術・人文知識・国際業務(いわゆる「技人国」)

  • 大卒など一定の学歴・実務経験を前提に、事務・企画・エンジニア等の「ホワイトカラー業務」が想定されています。
  • 単純作業や現場作業は、原則としてこの在留資格の範囲外とされています。

(2)経営・管理

  • 会社経営者や役員などの立場で、事業の経営・運営を行うことを想定した在留資格です。

(3)介護

  • 介護福祉士など一定の資格を持つ人が介護業務に従事するための在留資格。

(4)特定技能

  • 特定の産業分野における人手不足を補うために創設された在留資格で、現場作業を前提としています。

(5)技能実習

  • 本来は「人材育成」を目的とし、技能を母国へ移転する趣旨の制度です。令和9年4月に、技能実習制度は発展的に解消し、新たに人材育成と企業の人手不足解消を目的とする「育成就労制度」が始まります。
  • 実習計画に定めた業務以外を行わせることは原則許されません。

2 非就労系在留資格

(1)留学

  • 大学・専門学校・日本語学校などで学ぶための在留資格。
  • アルバイトをするには資格外活動許可が必要であり、週28時間などの上限時間があります。

(2)家族滞在

  • 就労系在留資格者の配偶者や子などを対象とする在留資格。
  • こちらも資格外活動許可を受けた場合のみ、一定範囲で就労可能です。

(3)短期滞在

  • 観光や親族訪問等が目的であり、原則として報酬を得る活動はできません。

3 在留資格と実際の業務内容が合っていない具体例

実務でよく見られる「ズレ」の例としては、次のようなものがあります。

  • 採用時に説明した職務(事務・企画など)と、実際の配属業務(単純作業・現場作業)が異なる。
  • 申請上は事務・企画・翻訳など「ホワイトカラー業務」だが、実際は販売・接客・単純作業が中心である。
  • 繁忙期に別部署・別現場へ回す「応援」が常態化している。
  • 「一部なら大丈夫」と思って、在留資格の活動外業務を日常的にやらせている。
  • 技能実習計画・特定技能の業務区分と違う作業をさせている。
  • 留学生アルバイトに、週28時間を超えてシフトを入れている。

 

「一時的だから」「みんなやっているから」という感覚で対応していると、気づけば長期にわたり在留資格と合わない業務をさせていたということになりかねません。

 不法就労助長罪が問題となった事件

新聞報道などでも、以下のとおり、不法就労助長が問題となった事案が繰り返し取り上げられています。

  • オーバーステイ(在留期限切れ)の外国人配達員を、十分な在留資格確認をせず業務委託したとして、フードデリバリー関連企業が書類送検された事案
  • 技術・人文知識・国際業務の在留資格を持つ外国人を、工場現場など本来想定されていない現業職で就労させたことが問題視された事案
  • 留学生が退学して在留資格を失っているにもかかわらず、あるいは週28時間を大幅に超えて就労させたとして、飲食チェーンの経営者らが不法就労助長の疑いで書類送検された事案

 

不法就労助長罪にならないための予防策

「知らなかった」では済まされない以上、日常の管理体制を整えることが重要です。

 

1 在留カードの原本確認

採用時はもちろん、更新時にも必ず在留カードの原本確認を行いましょう。特に確認すべきは次の3点です。

<在留カード>

 出典:出入国在留管理庁(https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/whatzairyu_00001.html)

【表】

 

【裏】

 

  • 在留資格の種類
  • 就労系か非就労系か
  • 「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「留学」など、具体的な資格名
  • 在留期間
  • いつまで在留が許可されているか(満了日)
  • 更新申請中であれば、その証明書類の有無
  • 就労制限の有無(裏面の「資格外活動許可」欄)
  • 「就労制限なし」か
  • 「資格外活動許可」欄に許可の有無・内容が記載されているか

 

コピーの保管も重要ですが、原本の目視確認をしているかどうかが大きなポイントになります。

2 在留資格と雇用契約書・職務内容との整合性の確認

採用時には、雇用契約書や職務記述書(ジョブディスクリプション)などの内容が、在留資格の範囲に収まっているかを確認しましょう。

特に、「技術・人文知識・国際業務で「現場作業」が含まれていないか」「技能実習や特定技能で、実習計画・業務区分外の業務が予定されていないか」といった点は、総務部門や人事部門だけで判断せず、必要に応じて専門家に相談しましょう

3 採用後の配属・業務変更と入管手続きの関係

採用時に問題がなくても、その後の配属変更、部署異動、業務内容の拡大・変更によって、在留資格とのミスマッチが生じることがあります。

本来であれば、

  • 在留資格の範囲を超える業務を継続して行わせる場合 → 在留資格変更許可申請
  • 業務内容を在留資格に合わせて修正する場合     → 配置転換・シフト調整

などの対応が必要となります。

「人手が足りないから」「少しだけだから」という理由で現場判断を許していると、知らないうちに取り返しのつかない事態にいたります。

4 定期的な社内監査・自己点検

外国人雇用に特化したチェックリストを用いて、

  • 在留カードの期限や資格内容
  • 実際の業務内容・シフト
  • 契約内容と現場運用の齟齬

を、定期的に社内監査・自己点検することも有効です。

5 管理職・現場担当者向け研修

在留資格や不法就労助長リスクは、人事部や総務部だけが知っていればよい話ではありません。

店長・現場責任者や各部署のライン管理職など、現場でシフトを組んだり、応援を指示したりする立場の人にこそ、基礎知識をインプットして誤解のない運用を心掛けてもらう必要があります。

外国人労働者の採用時や年1回など定期的に、管理職・現場担当者向け研修を実施しましょう。

6 匿名相談・内部通報窓口の整備

「この働かせ方、少しまずいのでは?」と現場で感じても、それを言い出せない雰囲気があると、問題は放置されます。

「匿名相談窓口」や「内部通報制度」を整備し、外国人・日本人従業員を問わず、疑問や不安を早めに共有できる仕組みを作ることが、重大な違反の未然防止につながります。

 

 

在留資格と実際の業務内容が合っていないことが判明した場合の事後対応

すでにズレがあることが分かった場合は、「見なかったことにする」「とりあえず放置する」は最悪の選択です。

ここからは、ズレが判明した場合に会社が取るべき事後対応の手順を説明します。

1 現状を調査・把握する

まずは事実関係をしっかり把握することが重要です。

① 書類の確認

  • 在留資格申請書類一式・在留カードの写し
  • 雇用契約書・就業規則・職務記述書(ジョブディスクリプション)
  • 実際の業務がわかるマニュアル・シフト表・指示メール・チャット履歴

 などを収集し、「書類上はどのような取扱いになっていたか」を整理します。

② 実態の調査

  • 現在雇用している外国人の在留資格・業務内容・シフトの棚卸し
  • 実際の業務内容・配置・指揮命令系統・勤務時間のヒアリング
  • いつから、どの程度のミスマッチが続いているか、時系列の整理

などにより、現場で何が起きていたのかを具体的に把握します。

 ③ 現状の分析

そのうえで、

  • 不法就労・不法就労助長罪に当たる可能性があるか
  • それ以外に、労基法・安全衛生法など、労働法令違反(長時間労働、安全配慮義務違反など)がないか

を整理し、リスクの大きさを評価します。

 

3 在留資格と業務内容を一致させる対応

そのうえで、今後どうするかを検討します。主に3つの対応ルートが考えらえます。

① 在留資格を変えていく(在留資格変更許可申請)

現に行わせたい業務が、現在の在留資格の範囲外である場合、在留資格変更許可申請によって、在留資格側を実態に合わせる方法があります。

ただし、必ず認められるわけではなく、要件や実績、会社側の体制などが審査されますので、専門家への相談が必須といえます。

② 業務内容を変えていく(配置転換・シフト調整)

逆に、在留資格に合わせて業務内容を修正する方法もあります。

  • 在留資格の範囲内で完結する部署への配置転換
  • 資格外活動許可で認められた時間内に収まるようなシフト調整

などを行い、今後は適法な形で就労を継続する方向です。

③ いずれも難しい場合(自然退職・解雇・雇止め)

どうしても、「在留資格を変えることも難しい」「業務内容を在留資格に合わせることもできない」という場合、やむを得ず、

  • 在留期間満了に伴う自然退職
  • 解雇
  • 有期契約の雇止め

 

などを検討せざるを得ないケースもあります。この場合、

  • 就業規則に自然退職条項があるか
  • 解雇理由が就業規則に明記されているか
  • 労働条件通知書に契約期間や更新有無の記載があるか

 

といった点を慎重に確認する必要があります。

 入管法上の問題と同時に、労働法上のトラブルにも発展しやすい場面ですので、ここでも外国人雇用や労働問題に詳しい弁護士に相談しながら慎重に進めることが極めて重要です。

 

疑問を感じた時点で専門家へ

在留資格と実際の業務内容のズレは、「人手不足」「現場の善意に基づく誤解」「制度への理解不足」が重なった結果であり、どの企業でも起こり得る問題です。

しかし、一度問題が表面化すると、刑事責任・行政処分・損害賠償、企業イメージの毀損、外国人本人の人生への深刻な影響といった取り返しのつかない事態に発展します。

「もしかすると、この働かせ方は在留資格に合っていないかもしれない」と少しでも感じた段階で、早めに外国人雇用や労働問題に詳しい弁護士や行政書士などの専門家へ相談することが不可欠です。それが、企業と外国人双方を守る最善のリスクマネジメントと言えるでしょう。

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