目次
団体交渉・労働組合対応に関する基礎知識
団体交渉とは
団体交渉とは、労働者が集団(労働組合など)で、使用者(企業側)との間で、労働条件、労働環境、その他労使関係のルールについて交渉することを言います。 賃金や労働時間、個人の懲戒処分や解雇、配置転換、人事考課、職場内の安全衛生、労働条件の不利益変更などが団体交渉で話し合われます。
企業側に求められる対応
労働組合から団体交渉の開催を求められた場合、使用者(企業側)は、団体交渉に応諾し、できる限り早い時期に団体交渉の場を設ける必要があります(団体交渉応諾義務)。
また、開催された団体交渉の場でも、使用者(企業側)は労働組合と誠実に交渉にあたる義務があります(誠実交渉義務)。単に組合の要求や主張を聴くだけでなく、それら要求や主張に対しその具体性や追求の程度に応じた回答や主張をなし、必要によっては、それらにつき論拠を示したり、必要な資料を提示したりしなければなりません。
なお、労働組合と誠実に交渉することが要求されていますが、妥協義務、譲歩義務まで課されているわけではありません。労働組合と誠実に交渉した結果、企業側と労働組合が歩み寄ることができず、労働協約の締結に至らなくてもそれはやむを得ないことであり、そのことで企業側が責任を問われることはありません。
対応が不十分だった場合のリスク
このように企業側は団体交渉応諾義務、誠実交渉義務を負担しており、労働組合法7条2号は、正当な理由なしに団体交渉を拒否することを「不当労働行為」として禁止しています。また、団体交渉自体には応じたものの、論拠や必要な資料を開示せず単に要求を拒否し続けたり、その場で一切回答せずただ「持ち帰って検討する」を繰り返したりするなど、不誠実な交渉態度を示すことも同様に、「不当労働行為」として禁止しています。
万一、企業側が団体交渉を拒否すると、労働組合から、労働委員会に対する救済申立(労働組合法27条)や損害賠償請求を受けます。また、このような不誠実な対応は、労使関係が悪化して社内のモチベーションの低下を招いたり、社会的非難を受けて企業イメージや信用低下を招いたりします。
団体交渉・労働組合の対応を弁護士に相談すべき理由
自社の利益を確保した最適な方針を示します
企業側が正しい方針を理解しないまま、感情的に労働組合と団体交渉をした結果、自社にとって思わぬ不利益を被るリスクがあります。組合嫌悪の感情のままに不誠実な交渉態度に終始してしまい不当労働行為として損害賠償責任を負う結果となったり、逆に組合恐怖の感情のままに労働組合の要求を応じすぎてしまい、企業側が過度の負担を負わされ経営権が大きく制限される結果となったりするリスクがあります。
労働問題に詳しい弁護士に事前に相談しておくと、企業側の経営上のニーズと不当労働行為などの法的リスクとのバランスが取れた、自社にとって最適な方針を示すことができます。このような最適な方針があれば、多少組合嫌悪・組合恐怖の感情があったとしても、自社のあるべき対応を守り切ることができ、団体交渉で右往左往することがありません。
労働組合を巡る法的リスクを回避します
労働組合等への対応を誤ると、労働組合から、労働委員会に対する救済申立(労働組合法27条)や損害賠償請求を受けます。労使関係が悪化して社内のモチベーションの低下を招いたり、社会的非難を受けて企業イメージや信用低下を招いたりもします。
労働問題に詳しい弁護士は、過去の経験やノウハウ、これまで蓄積された判例などの知識により、労働組合との団体交渉等にひそむ法的リスクを回避することができます。ひとたびリスクが発生すると、正常化するまでに大幅な時間・労力を要しますので、リスク発生を予防する弁護士の助言が不可欠となります。
団体交渉に同席して最適な方針に沿った交渉を実行します
企業側の交渉能力によっては、最適な方針や回避すべきリスクが分かっていても、交渉に長けた労働組合の交渉術により、言いたいことも言えず団体交渉が終結することがあります。労働組合の交渉担当者の勢いに押されて、ダメだと分かっていても、自社に不当に不利益な協定書にサインをしてしまうこともあります。多人数で罵倒されることもあるので、やむを得ないことです。
弁護士は普段から数を多くの交渉案件をこなしており、そのような経験やノウハウは団体交渉や労働組合の対応の場面でも活かすことができます。労働組合の交渉担当者が、威圧的な態度で要求を通そうとしても、弁護士はひるむことなく、毅然たる態度で要求を拒否して企業側の主張を展開することができます。
当事務所を含めた団体交渉に詳しい弁護士は、労働組合との団体交渉の場に同席して、企業側に代わり交渉することができます。法的リスクを回避しつつ最適な方針に沿った交渉を実行します。
当事務所における団体交渉・労働組合対応に関する対応実績
事例① ~厳しい団体交渉を乗り越えて残業代を大幅に減額して解決~
概要
運送業を営む企業様において、代表者による発言がパワハラに該当するとして、2名の従業員が外部の労働組合(合同労働組合)に加入しました。団体交渉開始後、パワハラを理由とする謝罪要求のみならず、未払残業代の請求も受ける事態となりました。
当事務所の弁護士が対応した内容
当事務所も団体交渉に同席しましたが、初めから最後まで、労働組合から厳しく罵倒や恫喝を受ける団体交渉でした。関西でも特に厳しい団体交渉を展開することで有名な労働組合でした。
労働組合員である従業員2名から残業代請求を受け、当事務所内で試算すると合計1,200万円になりました。代表者様は、事業を閉鎖するしかないと絶望していたのですが、当事務所が労働組合を何度も粘り強く説得して、従業員2名が退職することを条件として、150万円の長期分割で解決しました。
その企業様の代表者様からは「おかげで会社を破産させずにすみました」と感謝のお言葉をいただきました。
事例② ~的確な人事評価制度の導入により長期の労使紛争が終結~
概要
介護事業を営む企業様内では、ここ数年間、労働組合との紛争が続いていました。労働組合員に問題行動を繰り返す従業員がいたのですが、その従業員への雇止め、懲戒処分、賞与不支給がいずれも労働組合差別として、団体交渉をはじめ、労働委員会への不当労働行為救済を申し立てられたり、損害賠償請求訴訟を提起されたりし、ことごとく敗訴している状況でした。
当事務所の弁護士が対応した内容
当事務所の提案で、新たに人事評価制度を導入しました。人事評価の項目を現場の管理職が使用できるように現実的かつ分かりやすくし、できる限り企業様の主観が入らないように公正かつ客観的なものとしました。管理職にもそのルールを徹底的に周知・教育しました。さらに、新人事評価制度を導入するに前に、労働組合と意見交換を繰り返し、導入後も、賞与査定時期ごとに、管理職の人事評価内容のモニタリングと改善の助言を続けました。
新人事評価制度により、その従業員は徐々に自らの問題行動を自制するようになり、労働トラブルが減少していきましたが、それでもなお、その従業員は問題行動を繰り返しました。これに対して、当事務所は、労働組合差別と疑われないように、懲戒処分手続を適正に行うように指導し、かつ人事評価制度も過度に厳しくなりすぎないようにルールに沿った評価を徹底するように指導しました。
新人事評価制度後に起こした問題行動に対する懲戒処分について、労働組合はこれまでと同様の手法で労働組合差別と主張して、不当労働行為救済の申し立てをしましたが、公正かつ客観的な人事評価制度の導入により労働委員会も労働組合差別ではないとして、申立を棄却しました。その企業様が初めて勝訴を飾ることになりました。
やがて、その従業員は規律の回復した会社に居づらくなったのか、自主退職して10年以上にわたる労使紛争は終焉を迎えることになりました。
事例③ ~法的根拠を突きつけて紛争を沈静化~
概要
介護事業を営む企業様にて、正当な理由により有休取得を認めなかった従業員が、有休取得を認めないのは不当であるとして団体交渉を申し入れがなされました。
当事務所の弁護士が対応した内容
この団体交渉には企業様のご要望により当事務所の弁護士が同席しました。その団体交渉の中で弁護士が当該従業員に有給が発生していないという決定的な根拠を発見しました。同席した弁護士はこれを労働組合側に突きつけ、これにより紛争を沈静化させることに成功しました。
事例④ ~法律事務所でも団体交渉・労使紛争に悩む~
概要
法律事務所の所長弁護士からの相談でした。所属していた事務職員の勤務態度が悪いため退職勧奨したところ、外部の労働組合に加入されて、その労働組合から団体交渉を申し込まれした。同業ですが、労働問題に詳しくないとのことで、当事務所に相談されました。
当事務所の弁護士が対応した内容
所長弁護士から相談を受けた印象として、労働組合の存在自体を過度に恐れていました。事情を聞き取っても、普段の労務管理に特段問題はなく、退職勧奨の態様も平穏なもので問題はありませんでした。
そこで、団体交渉の内容や対応方法を説明し、主張は堂々と展開しても紛争が激化する可能性が低いこと、最終的には2~3か月分の給料での金銭解決の流れになるであろうことを助言しました。普段交渉にはなれている弁護士ですので、このような助言により自信を回復しました。
後日、当事務所の助言どおり、金銭解決で終結したことの報告とともに、心強かったとの感謝の声をいただきました。
当事務所におけるサービス内容
団体交渉・労働組合対応へのアドバイス
当事務所は、労働問題に詳しい弁護士が所属しており、過去の経験やノウハウ、これまで蓄積された判例などの知識により、労働組合との団体交渉等にひそむ法的リスクを回避することができます。ひとたびリスクが発生すると、正常化するまでに大幅な時間・労力を要しますので、リスク発生を予防する弁護士の助言が不可欠となります。
また、当事務所は、勝つか負けるかだけにこだわるのではなく、企業様が望む安定かつ良好な労使関係の回復を目指しておりますので、企業側の経営上のニーズと不当労働行為などの法的リスクとのバランスが取れた、自社にとって最適な方針を示すことができます。
団体交渉への同席
当事務所は普段から数を多くの交渉案件をこなしており、そのような経験やノウハウは団体交渉や労働組合の対応の場面でも活かすことができます。労働組合の交渉担当者が、威圧的な態度で要求を通そうとしても、当事務所はひるむことなく、毅然たる態度で要求を拒否して企業側の主張を展開することができます。
当事務所では、労働組合との団体交渉の場に同席して、企業側に代わり交渉することができます。法的リスクを回避しつつ最適な方針に沿った交渉を実行します。
団体交渉後の紛争対応
当事務所は、企業側に立って、労働組合との裁判を数多くこなしてきた実績があります。労働委員会に対する不当労働行為救済申立事件や労働組合からの損害賠償請求訴訟などです。
見解の相違等により残念ながらこれらの法的紛争に発展した場合も、当事務所はその実績により、適切かつ効果的な立証活動により手続を有利に進めるとともに、依頼者を手続の負担から解放することができます
顧問契約によるトラブル防止に向けた体制構築
労働組合が結成されたり、団体交渉を要求されたりする場合、そもそも、その企業様の労務管理において根本的な問題やリスクが潜んでいる可能性があります。そうなると、団体交渉や損害賠償などを解決しても、その解決は対症療法に過ぎず、根本治療がなされないまま、再度同様の労使紛争が発生することがあります。そのような労使紛争を繰り返す企業様も実例として見てきました。
団体交渉・労働組合対応にお困りの方はお気軽にお問い合わせください
当事務所では、顧問契約や労務コンサルティングにより、労務管理における根本的な問題やリスクを解消することができます。このような根本治療により問題を根本的に解決できれば、労使紛争は激減し、かえって労使紛争により生じる費用が節約されコストカットになりますし、何よりも企業様が望む安定かつ良好な労使関係の構築には不可欠です。
同じ労働問題に対して、事前法務・日常管理的な業務を行う社労士と、事後法務・危機対応的な業務を行う弁護士とで、事案の捉え方や解決の視点が異なることがあります。また、ある法改正でも、社労士と弁護士とで視点が異なるため、法改正情報の着眼点や重視するポイントが異なります。時として、顧問弁護士と顧問社労士の見解が異なり、どちらの見解に従えばよいか混乱している企業様もいます。
当事務所は、顧問契約や労務コンサルティングにおいても、弁護士・社労士の両視点を統合した最適解や重要情報を提示しております。
団体交渉・労働組合対応に関するご相談は労務問題に精通した弁護士と社労士が在席している当事務所にお任せ下さい。