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外国人雇用の費用は誰が負担する? ~特定技能1号における費用負担の基本ルール~

特定技能1号の外国人を採用すると、在留資格の申請費用、来日時の航空券や送迎費、住居の初期費用、日本語教育費、資格取得費など、さまざまな費用が発生します。登録支援機関へ支援を委託する場合は、毎月の委託費も必要です。

一方で、すべてを会社(特定技能所属機関)が負担するわけでも、すべてを本人負担にできるわけでもありません。本コラムでは、実務上判断に迷いやすい費用について、会社負担と本人負担の基本的な考え方を解説します。

特定技能外国人の費用負担を判断する基本的な考え方

1 費用は『何のための支出か』で判断する

特定技能外国人に関する費用について、すべて会社負担、またはすべて本人負担という一律のルールがあるわけではありません。まず、その費用が特定技能1号の義務的支援に必要なものか、会社の採用活動や業務遂行のためのものか、本人の生活や自主的な学習・資格取得のためのものかを確認します。

出入国在留管理庁の運用要領では、1号特定技能外国人への義務的支援に要する費用を、本人へ直接または間接に負担させないことが求められています。「支援費」「管理費」「生活サポート費」などの名称に変えても、実質が義務的支援の費用であれば本人へ請求することはできません。なお、会社(特定技能所属機関)に課された義務的支援は以下の10項目です。

2 本人負担にするには事前説明・合意・適正な金額が必要

家賃、水道光熱費、日本語教室の受講料など、本人負担とする余地がある費用でも、会社が自由に金額を決めて徴収できるわけではありません。

本人が受ける利益、負担額、内訳、支払方法を、本人が理解できる言語で事前に説明し、合意を得る必要があります。定期的に徴収する生活費は、実費相当額その他の適正な額でなければなりません。

求人票、雇用条件書、支援計画、住居利用契約などの記載を一致させ、通訳や翻訳文を用意しておきましょう。

なお、本人の署名があっても、本来会社が負担すべき費用(義務的支援に要する費用など)まで本人へ転嫁できるわけではありません。費目を変えたとしてもその費目の実態で判断されますので、本人への転嫁が許されることになりません。

 

特定技能外国人の初期費用は誰が負担する?

1 在留資格申請費用は費目ごとに整理する

1号特定技能外国人から在留資格の変更・更新などについて相談があった場合、会社は、本人に同行して必要な手続の補助を行わなければなりません(義務的支援5. 公的手続等への同行)。

会社が申請時の同行に代えて弁護士や行政書士へ申請書類の作成や取次ぎを依頼する場合は、その専門家報酬は会社が負担する必要があります。

一方、本人が独自に専門家へ依頼した場合や、本人の家族に関する手続費用まで当然に会社負担となるわけではありません。在留申請の行政手数料、証明書取得費、翻訳費、専門家報酬を一つの「ビザ代」として処理せず、費目と依頼者を分けて整理することが大切です。

2 入国時の航空券は合意により本人負担とすることもできる

海外から日本へ来るための航空券代は、送出し国の法令やガイドラインを踏まえて、その全部又は一部を負担することが推奨されています。ただし、このような入国前の渡航費は特定技能1号の義務的支援費用に含まれるものではなく、本人負担とすることもできます。

本人負担とする場合は、対象区間、受託手荷物代、出国地までの国内交通費などの範囲を採用前に書面で示します。送出機関を利用するときは、本人が本国で支払った費用の額と内訳も確認しましょう。

3 入国時・帰国時の送迎費用は会社側が負担する

① 入国時

1号特定技能外国人が入国する際の空港・港から事業所または住居までの送迎は、義務的支援に含まれます。本人と同行者の交通費、ガソリン代、高速道路料金、駐車料金などの実費は、会社または登録支援機関が負担します。

② 一時帰国時

一時帰国を希望した場合は、休暇取得を認める必要があります。ただし、一時帰国時の出入国は送迎義務の対象外です。

③ 帰国時

雇用契約終了後に出国する際は、空港・港まで送迎するだけでなく、保安検査場の入口まで同行し、入場することを確認する必要があります。

なお、帰国時の航空券は本人負担が原則ですが、本人が帰国費用を負担できない場合は、会社が旅費を負担し、円滑な出国を確保する義務があります。帰国費用の確保を目的として、あらかじめ給与から積み立てて会社が管理することは認められません。

 

特定技能外国人の住居・家具・水道光熱費は会社が負担すべきか?

1 敷金・礼金は住居の契約名義によって結論が異なる

①本人が賃借人として住居を契約する場合

敷金・礼金は本人負担が原則であり、会社に負担が義務付けられているわけではありません。ただし、会社が任意に全額または一部を補助することは可能です。

なお、賃貸借契約に際し、連帯保証人が必要な場合は、会社が連帯保証人になるか家賃債務保証業者を確保することになるでしょうが、家賃債務保証業者の保証料は会社が負担する必要があります。

②会社が物件を借り上げて社宅として提供する場合

本人から徴収できる居住費は、家賃、管理費、共益費などを入居人数で合理的に按分した額以内です。
会社が支払った敷金、礼金、保証金、仲介手数料、更新手数料などを家賃へ上乗せし、本人に負担させることはできません。

③自己所有物件の場合

本人から徴収できる居住費は、実際に建築・改築と等に要した費用、物件の耐用年数、入居人数等を勘案して算出した合理的な額の範囲です。

 

2 家賃・家具・家電・水道光熱費を本人負担にできる条件とは

①水道光熱費

水道光熱費など、本人の日常生活に直接かかる費用は、適正な範囲で本人負担とすることができます。実際の請求額を同居人数で割るなど、算定根拠を明確にします。

②家具・家電

住居に付随する家具、家電などの備品などを会社が提供する場合も、本人が内容を十分に理解して合意し、費用の請求が実費の範囲内で合理的な金額であれば、居住費用として本人負担とすることができます。

③火災保険・損害保険

火災保険料、損害保険料を本人に負担させる場合は、保険費用の対価として提供される利益(保険による補償対象など)が、本人に帰属するものであるか保険の内容を十分に確認しましょう。

 

日本語教育費は本人負担?本人負担?

1 日本語学習の「機会の提供」は義務的支援に当たる

1号特定技能外国人に対しては日本語学習の機会を提供する必要があります。地域の日本語教室や認定日本語教育機関の案内、自主学習教材やオンライン講座の情報提供、必要に応じた入学・利用手続の補助などを行います。

これらの支援に必要な事務費・人件費は会社が負担し、登録支援機関へ委託した場合も委託費を本人へ転嫁することはできません。

2 受講料等は全額本人負担も可能だが過度な負担は避ける

日本語教室の入学金・月謝、オンライン講座の受講料、本人が使用する教材費などは、前記の支援費用とは区別され、本人負担とすることができます。もちろん会社が全部または一部を補助することも可能です。

ただし、会社が特定の高額講座を事実上強制し、その受講料を本人に負担させるような運用は避けるべきです。本人の日本語レベル、手取り額、勤務時間、通学距離などを踏まえて複数の学習方法を示し、過度な費用や時間的負担にならないよう配慮しましょう。

 

資格取得費用は誰が負担するのか

1 自主的な資格取得か業務命令かによって判断する

介護福祉士を目指す場合など、実務者研修の受講料、教材費、国家試験の受験手数料、登録費用などが発生します。これらは義務的支援費用に含まれないため、本人の自主的な資格取得であれば本人負担とすることができます。

 一方、会社が業務命令として特定の研修を受けさせる場合や、現在の担当業務を行うために受講が不可欠な場合は、会社負担とするのが適切です。「資格は本人に帰属する」という理由だけで、会社都合の研修費まで当然に本人負担となるわけではありません。

 

2 会社の資格取得支援と貸付制度の注意点

資格取得費の全部または一部を会社が補助することは、人材育成や中長期的な雇用につながります。補助規程には、対象資格、対象者、上限額、申請手続、合否や再受験の取扱いを定め、合理的・客観的な基準を設けましょう。

会社独自の貸付制度を設ける場合には慎重な検討が必要です。「一定期間勤務すれば返済を免除する」「退職したら残額を一括返済する」といった仕組みは、退職の自由を不当に制約するものとして問題になる可能性があります。研修費を貸付金という名称に変えれば安全になるわけではありません。

貸付の必要性、金額、返済期間、利息、退職後の分割返済などを合理的に定め、雇用契約とは切り分けて本人が自由意思で選択できるようにします。給与控除や退職時の返還条項については、特定技能制度上の受入基準と労働基準法の両面から確認することが重要です。

 

登録支援機関への委託費用は本人負担にできる?

1 義務的支援にかかる委託費用は会社負担が原則

1号特定技能外国人の受入れ機関(会社)は、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保・生活契約の支援、生活オリエンテーション、公的手続への同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情対応、定期面談など(義務的支援)を支援計画に基づいて実施します。自社で支援体制を整えられない場合は、登録支援機関へ全部または一部を委託できます。

登録支援機関へ支払う月額委託費、初期支援費、通訳費、面談費などのうち、義務的支援を実施するための費用は会社負担です。委託契約では、月額料金に含まれる支援、別料金となる業務、交通費・通訳費の取扱いを確認しておきましょう。

2 名目を変えて本人から徴収することもできない

登録支援機関への委託費を「管理費」「サポート費」「通訳費」「研修費」などの名目で本人から受け取っても、実質が義務的支援の費用であれば間接負担に当たり、認められません。本人から現金で受領する場合や、社宅費などに上乗せする場合も同様です。

例えば、登録支援機関へ毎月3万円を支払っているからといって、本人の給与から毎月3万円を「管理費」として控除することはできません(1~2万円など部分的な控除も不可)。本人が同意書に署名していても結論は変わりません。会社と登録支援機関の請求書、住居費の算定表、給与明細を照合し、義務的支援費用が本人へ転嫁されていないか定期的に確認しましょう。

 

最後に

特定技能外国人の費用負担は、費用の目的と制度上の位置付けを踏まえて判断することが重要です。義務的支援は会社負担であり、本人負担とする場合にも十分な説明と合意が必要です。採用時から費用負担を整理しておくことで、後日のトラブルを防ぐことができます。

なお、本人負担とできる費用であっても、給与から自由に控除できるわけではありません。また、会社が立替払いや貸付を行った場合の返還方法や、退職時の一括返済条項の有効性なども実務上問題となります。これらについては次回コラムで詳しく解説します。

弁護士法人ブレイスでは、外国人雇用に関する労務問題をはじめ、費用負担や給与控除の設計、雇用条件書・住居利用契約・労使協定の整備、登録支援機関との委託契約の確認など、企業の実情に応じたサポートを行っています。特定技能外国人の費用負担でお困りの際は、お気軽に当事務所までご相談ください。

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