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2026年10月義務化:就活セクハラ防止措置とは?
企業が今から整えるべき対応を解説

新卒採用や中途採用、インターンシップなど、企業は日々、学生や求職者と接しています。こうした場面でのセクシュアルハラスメント(いわゆる「就活セクハラ」)の防止は、これまで指針上の「望ましい取組」にとどまっていましたが、2026年10月1日から、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(通称「男女雇用機会均等法」、以下「均等法」といいます)13条に基づき、規模を問わずすべての事業主の義務となりました。

本コラムでは、事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第52号、以下「指針」といいます)をもとに、実務上押さえておくべきポイントを解説します。

まず押さえたいポイント:セクハラ防止措置の対象が「社外」に拡大

何が変わるのか

従来の均等法11条のセクハラ防止措置は、自社で雇用する労働者を守るためのものでした。今回新設された均等法13条1項は、自社の労働者の性的な言動により求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、相談体制の整備その他の必要な措置を講じることを、事業主に義務づけています。

保護の対象が、まだ雇用関係にない学生や求職者にまで広がったことが最大のポイントです。

なぜ今、義務化されるのか

厚生労働省の令和5年度「職場のハラスメントに関する実態調査」では、2020〜2022年度卒業で就職活動またはインターンシップを経験した男女のうち、セクハラを経験した人が3割を超えていました。採用する側とされる側には立場の差があり、被害を訴えにくいことが背景にあります。被害は求職者の心身に影響するだけでなく、企業にとっても、社会的信用の低下や応募者の減少につながり得ます。

 

求職者等に対するセクシュアルハラスメントとは?

定義と保護対象の範囲

指針は、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを、事業主が雇用する労働者による性的な言動により、求職者等の求職活動等が阻害されるものとしています。

「求職者等」には、求人に応募する求職者のほか、採用に資する活動に参加する人や、教育実習、看護実習などの実習を受ける人も含まれます。同性に対するものや、被害を受けた人の性的指向・ジェンダーアイデンティティにかかわらず、対象となります。

対象となる「求職活動等」の具体例

採用面接、就職説明会、OB・OG訪問(企業の雇用する労働者への訪問)、インターンシップ、各種実習が該当します。SNS等のオンラインを介したものも含まれ、従業員が通常就業している場所で行われるものに限りません。

該当し得る言動の具体例

「性的な言動」には、性的な事実関係を尋ねる、性的な内容の情報を意図的に流布するといった発言と、性的な関係を強要する、必要なく身体に触る、わいせつな図画を配布するといった行動が含まれます。

指針は典型例として、次のような場面を挙げています。

・面接官が性的な事実に関する質問をする

・OB・OG訪問の際に性的な関係を求める

・インターンシップ中に私的な食事へ執拗に誘う

・少人数の説明会で腰や胸に触る

いずれも求職者等の意に反し、求職活動等の意欲が低下するなど、看過できない程度の支障が生じる場合が問題となります。

 

企業が講ずべき措置の内容

方針の明確化・周知

事業主が講ずべき措置は、①方針の明確化と周知・啓発、②相談体制の整備、③事後の迅速かつ適切な対応、④これらと併せて講ずべき措置の4つです。

①では、就活セクハラを行ってはならない旨の方針と、行為者に厳正に対処する旨の方針を、就業規則等に定めて、管理監督者を含む労働者に周知・啓発します。

あわせて、面談時間・場所の指定、実施体制、やり取りに使うSNSの種類の指定など、求職者等と面談する際のルールを定めて従業員に周知するとともに、求職者等にも、面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等で周知する必要があります。

相談体制の整備

②では、相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知します。担当者の指定、相談対応の制度の整備、外部機関への委託などが考えられます。求職者等は人事担当者への相談をためらうことも想定されるため、人事担当者以外の人を窓口担当者とすることも考えられる、とされています。

また、セクハラに該当するか微妙な場合や、発生のおそれの段階でも、広く相談に応じる必要があります。人事部門との連携の仕組み、マニュアルの整備、担当者への研修などで、適切に対応できる体制を整えましょう。

事後対応とその他の措置

③では、相談があった場合に、相談者と行為者の双方から事実関係を迅速かつ正確に確認し、事実が確認できれば、被害者への配慮の措置と、行為者への懲戒等の適正な措置を講じます。事実が確認できなかった場合も、方針の再周知や研修など、再発防止に向けた措置が必要です。

④では、相談者・行為者等のプライバシーを保護する措置を講じ、これを労働者及び求職者等に周知します。また、事実確認に協力した労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしない旨を定め、周知します(均等法13条2項)。

 

実務上とくに注意すべきポイント

相談窓口は「社外」への周知が前提

従業員向けの既存の窓口を活用することは考えられますが、求職者等からの相談も受け付けていることを、求職者等に届く形で伝える必要があります。社内にだけ周知しても、求職者等に周知したことにはなりません。採用サイトや募集要項、説明会・インターンシップの案内資料などに、窓口を明記しておくとよいでしょう。

面接官・採用担当者以外も対象になり得る

対象となるのは、事業主が雇用する労働者の言動です。面接官や人事担当者に限らず、インターンシップの受入部署の従業員、OB・OG訪問に応じる従業員、リクルーターなども含まれ、パートや契約社員、受け入れている派遣労働者も対象です。厚生労働省の実態調査でも、行為者として、インターンシップを担当した従業員やOB・OG訪問で知り合った従業員が多く挙げられています。

また、指針は、経営者や役員ご自身にも、求職者等への言動に注意を払うよう努めることを求めています(均等法14条3項)。

オワハラ・圧迫面接との違い

法律で措置が義務づけられたのは、性的な言動(セクハラ)です。たとえば、オワハラや圧迫面接のようなパワハラに類する行為は、措置義務の対象ではありません。ただ、指針は、セクハラ防止の方針を示す際に、これらについても同様の方針を併せて示すことが望ましいとしています。採用活動全体のルールとして、一体的に整備しておくのが現実的です。

 

企業が見落としやすい実務上のリスク

現場任せの採用活動によるリスク

面接官やOB・OG訪問の対応、インターンシップの運営が各部署・個人任せだと、面談の場所や連絡手段がばらつき、相談があっても人事部門に共有されず、対応が遅れかねません。

措置を怠ると、厚生労働大臣(権限の一部は都道府県労働局長に委任)から助言・指導・勧告を受ける可能性があり(均等法35条)、勧告に従わなければ、その旨が公表されることがあります(同法36条)。また、事案によっては、被害を受けた求職者等から、使用者責任(民法715条)等に基づく損害賠償を請求されるおそれもあります。

研修・周知の形骸化リスク

規程を整備しても、採用に関わる従業員に周知されていなければ意味がありません。担当者は年度ごとに入れ替わることも多いため、採用シーズン前に、研修や注意喚起を毎年行うことが重要です。事業主には、研修の実施その他の必要な配慮に努めることが求められています(均等法14条2項)。

 

まとめ:採用活動全体の見直しが必要

今後の対応で重要な視点

就活セクハラ対策は、規程を整えるだけでは足りません。就業規則等の整備、求職者等に向けた相談窓口の周知、面談ルールの設定、採用に関わる従業員への研修、相談を受けたときの対応の流れの整備までを、一体として進める必要があります。すでに施行されていますので、まずは現状の点検から始めましょう。

こんな場合は要注意 ☑!

次のような状況がある場合は、就活セクハラ対策が不十分な可能性があります。早めに自社の運用を見直しましょう。

□ 面接官やOB・OG訪問、インターンシップの担当者に、研修や注意喚起をしていない

□ 就業規則等に、求職者等へのセクハラを禁止し、行為者を懲戒する旨の定めがない

□ 求職者等と面談する際の時間・場所・連絡手段のルールがない

□ 相談窓口が社内向けのみで、採用サイト等で求職者等に周知していない

□ 相談があった場合の事実確認や人事部門との連携の流れが決まっていない

□ OB・OG訪問やインターンシップの運用を、各部署の現場任せにしている

専門家への相談を検討すべき場面

規程と運用にズレがある場合や、すでに相談・トラブルが生じている場合には、社内の判断だけで進めるのは危険です。対応に不安がある場合は、早い段階で弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

弁護士法人ブレイスでは、こうした労務管理や社内ルール整備を一体的に支援することが可能となります。

就業規則等の社内ルールの見直し、相談窓口体制の構築、採用実務を踏まえた運用設計まで、企業の実情に応じた支援を行っています。お困りの企業は遠慮なくお問い合わせください。

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