ブレイスコラム

「労働問題×交通事故×顧問業務のクロスオーバー」~勉強会を開催しました~

ブレイスコラム

 弁護士法人ブレイスでは労働問題を中心として扱っていますが、そのほかにも多くのご依頼をいただく案件として、交通事故の分野や顧問弁護士業務があります。
 この度、所内にて「労働問題×交通事故×顧問弁護士業務」というテーマで勉強会を開催しました。
様々な分野を積極的に扱う弊所ならではの勉強会でした。
 今回、取り扱った判決は、被用者から使用者に対する逆求償が認められた、という最高裁判決(福山通運事件)です。
 この判決は、従業員が働く過程で第三者に損害を与えた(交通事故を起こした)した後、従業員が被害者に支払った賠償金について、従業員は会社に対して逆求償という形で請求できることを判示した新しい最高裁です。
 
■福山通運事件 (最二小判令和2年2月28日 労判1224号5頁)
 従業員であるXは、Y会社に雇用されトラック運転手として貨物の運送業務に従事していたところ、交通事故を起こし、Aさんを死亡させた。
会社は任意保険などに加入していなかったところ、被害者Aの遺族は交通事故を起こした直接の加害者X従業員を訴訟提起し、1500万円の賠償義務が認められ、X従業員はこれを弁済した。
しかし、X従業員は、損害賠償責任を従業員のみが負担することが不服であるとして、Y社に対し、自身が支払った損害賠償金の支払いを求め、訴訟提起(逆求償)した、という事件です。
これに対して最高裁判所は、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解するとして、従業員から会社に対して逆求償が認められることを判示した。

 従業員がうっかり事故を起こしてしまった、取引先に多大な迷惑をかけてしまった。こういった従業員が第三者に対して損害を発生させてしまうことは、従業員も人間である以上不可避的に発生します。
多数ある類型は交通事故です。従業員が交通事故を起こした場合、会社が当該車両に任意保険を加入することで会社は賠償責任を補填することはできますが、今回ご紹介する判例は、折からの不景気が理由か不明ですが、任意保険に加入していなかった会社従業員が交通事故を起こしてしまったケースです。
会社が車両の任意保険に加入していなかったため、事故被害者から訴えられた従業員は自ら被害者に賠償金を支払いました。その後、従業員は支払った賠償金を会社にも負担するよう逆求償を求めて訴訟提起しました。
 これに対して最高裁は、「損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができると解すべきである。」と判示しました。
つまり、会社は、従業員が支払った第三者への賠償金を負担する必要がある場合があることを最高裁が示したのです。
 現実にバス会社や運送会社でも、自賠責保険のみに加入し、すべての車両に任意保険をかけず、有事の際は自己資金で賠償する方針の会社もあると耳にします。
ですが、すべての車で保険加入するなどして十分な賠償能力を備えることは事故被害者の救済だけではなく、被用者の負担軽減のためにも大切なことです。
加えて、会社にとっては単なるコストカットのつもりで任意保険を解約したのだと思いますが、一度事故が発生してしまうと、コストカット以上の費用負担が発生するケースがあり、結局は会社にとってより大きなコストが生じることもあります。
弊所では、そういった普段の業務の悩みについても顧問業務として相談を受け付けております。紹介した判例の事案であれば、任意保険の費用以上に会社にとって損害が生じることもあるという回答ができたはずです。
弊所では労働問題以外にも交通事故や顧問業務を重点的に取り扱っております。本ブログを読まれた方は、一度、任意保険を見直すとともに、従業員が事故などを起こした際や経費削減案とその法的なリスクなどについても、ぜひ弊所までご相談ください。