ブレイスコラム
法人破産についてのギモン3
- 法人破産をした場合、代表者はどうなりますか?
- 法人破産をした場合、代表者の自宅不動産や車を残せますか?
- 法人破産をした場合、代表者の家族はどうなりますか?
はじめに
コロナ融資の返済が開始した影響か、法人の債務整理の相談が増えています。債務整理の代表が破産手続ですが、「破産」という言葉に強い抵抗を感じる経営者様は多くいらっしゃいます。前回のコラムに引き続き、今回は、法人破産をした場合の代表者自身への影響を中心に、皆様が気になると思われるトピックをピックアップして、より詳しく解説します。
法人破産をした場合、代表者はどうなりますか?
まず、会社が破産すると、代表者も当該会社の仕事がなくなることとなります。
そして、代表者が会社の債務について保証人となっている場合、法人破産により会社債権者は、代表者に対して債務の弁済を求めることとなります。しかし、代表者は上述のとおり仕事もなく、会社の負債を全額返済するだけの財産を保有しているとも限らず、弁済が困難であることが想定されます。
そうであれば、法人破産の際には、代表者個人での自己破産についても検討する必要があります。
法人破産と共に、代表者についても同時に自己破産の申立てをすることが、通常考えられ、この場合、代表者個人の自己破産は、法人破産の関連事件として処理されることとなります。関連事件として処理されれば、法人と代表者個人の自己破産をまとめて処理でき、予納金の費用も抑えられます。
※代表者個人の自己破産につき、弁護士費用は別途発生いたしますのでご注意ください。
法人破産をした場合、代表者の自宅不動産や車を残せますか?
上記のとおり、代表者個人が破産した場合、最大のデメリットの1つとして挙げられるのが、代表者が所有する自宅不動産や車を手元に残せない可能性が高いことです。基本的には財産目録に計上され、価値によっては、売却又は競売による換価処分後、債権者に配当されることとなります。以下、具体的に見てみましょう。
自宅不動産を保有している場合、まずは評価額と担保権の有無を確認します。評価額は、固定資産税評価証明書又は不動産会社の査定書によって算定します。自宅不動産は、基本的には破産手続開始決定後、裁判所の許可を受けて破産管財人により処分されます。処分方法は管財人の判断に一任されておりますが、考えられるのは、「任意売却」と「競売」の2つとなります。一般的には、当該自宅不動産の担保権者(住宅ローン会社等)との協議の上で決定します。
「任意売却」は、破産管財人が、当該自宅不動産の担保権者に同意を得て、不動産会社等に依頼し、売却の手続をすすめます。売買代金については各担保権者に優先的に配当を行い、その後残代金があれば破産財団に組入れられることとなります。
これに対し、「競売」は、裁判所への競売申立てにより行われます。競売は、任意売却より安い価格で処分されることとなります。
いずれにせよ、破産手続開始決定後、自宅不動産の処分が完了し、引き渡すまでは自宅不動産に住み続けることができます。
その他、自己破産申立前に「任意売却」をすることも考えられます。こちらも、当該自宅不動産の担保権者の同意を得て、売却を進める方法です。メリットとしては、管財人による処分よりも高く売却できる可能性がある点にあります。また、売却代金を弁護士費用等に充当することもできます。デメリットは、破産管財人による処分よりも早く自宅不動産から引っ越しを行わなければなりません。
自宅不動産の処分についてのベストな時期は、破産者の置かれている状況により異なりますので、弁護士等専門家に相談することをお勧めいたします。
自動車に関しましては、ローンが残っている場合と、そうでない場合に分けられます。
ローンが残っていない場合は、自動車の時価が20万円以上であれば、原則として自動車は処分されることとなります。ただし、外国製の高級車であるなど一定の価値があるものを除き、減価償却期間(一般に、初年度登録から乗用車は6年、軽自動車は4年)を経過していれば、評価ゼロで計算されるため処分されない可能性もあります。
ローンが残っている場合は、自動車の所有権はローン会社が留保していることが通常であるため、自動車の時価に関わらず、自動車をローン会社に引き揚げられてしまうこととなります。引き揚げ時期は、ローン会社にもよりますが、弁護士による受任通知発送後おおよそ1ヶ月以内となります。
法人破産をした場合、代表者の家族はどうなりますか?
ご家族が、会社の債務につき保証人となっているようなことがなければ、ご家族の方へ債権者から弁済を求められることはございませんので、ご安心ください。ただ、代表者個人が自己破産される場合は、上述のとおり、自宅不動産や車が処分されることとなり、引っ越し等を余儀なくされますので、ご家族に全く影響がないわけではありません。
なお、上述の自宅不動産や車は、ご家族名義のものであれば、裁判所から処分されるようなことはありません。ただし、このことを利用して、代表者(破産者)が自己破産の前にご家族の名義に変更された場合には、財産隠しに該当するとされ、自己破産の免責不許可事由(破産法252条1項1号)となります。また、自己破産時の財産隠しは、詐欺破産罪(破産法265条)に問われ、免責許可決定後に発覚した場合、免責の取消し決定がなされるおそれもありますので、絶対にしないでください。
おわりに
法人破産は、従業員や取引先など利害関係人が多数に上る一方、迅速な申立てが要求されるケースも多いため、法人破産の実績がある法律事務所へ委任することをお勧めします。
弁護士法人ブレイスは、法的な知識と経験を活かし、的確な助言・解決を目指します。
ご不安な方は、遠慮なく当事務所までご相談ください。