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その解雇、大丈夫ですか??顧問弁護士と顧問社労士にご相談ください!

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その解雇、大丈夫ですか?

その解雇、大丈夫ですか?

前回のコラムにて、整理解雇が有効になる場合、無効になる場合について記事を作成させていただきました。
コラムに対する反響も大きく、整理解雇が一筋縄で有効にならないことは理解いただいたかと思いますが、では、整理解雇が無効になった場合、会社はどういうことになるの?という質問も多く頂戴しました。
そのため、今回のコラムでは、整理解雇が無効になった場合に会社が負う責任や、またコロナ禍のような状況でも会社はその責任を負うか、また責任の程度なども解説したいと思います。

整理解雇の参考事例

前回のコラムにてご紹介した事例ですが、事案の概要をもう一度記載いたします。

事案の概要

従業員Xらは1~5年の有期契約でタクシー乗務員としてY社に勤務していたところ、
2020年3月以降、新型コロナの影響緊急事態宣言によってY社の売上高も大幅に減少した(2020年4月で約1415万円の支出超過)。
Y社は代表Aから借入をしたり、雇用調整助成金の説明会に出席したり、従業員のうち4人程度を除いて休業させたり、残業、夜勤を禁止したりなどしていた。これに対し、Xらが加入する労働組合はY社と団体交渉をしていたが、2020年4月30日、Xら組合員を含む従業員を整理解雇した。
これに対し、Xら従業員は解雇を無効として、従業員としての地位が係属しているとする地位保全及びその間の賃金の仮払いを求めて仮処分を提起した。

ノーワーク・ノーペイの原則

ノーワーク・ノーペイの原則

まず、整理解雇がなされたものの、その後に解雇が無効になった場合、その期間中の給料はどのように扱われるでしょうか。
原則として従業員の給料は働かなければ発生しません。当たり前のような話ですが、これをノーワーク・ノーペイの原則といいます。
そのため、従業員側の理由によって欠勤した場合、給与の支払義務は発生しません。
では、解雇を行ったものの、後に解雇が無効と判断された場合は、従業員は働こうと思っても働けなかったということになります。この場合にもノーワーク・ノーペイの原則が適用されるでしょうか。言い換えると、会社側に原因があって働くことができなかった(働けなかった)場合に給与の支払義務が発生するかどうかです。

会社側の事由で働くことができなかった場合にどうなるか

法律上、会社側の事由で労働者が働くことができなかった場面につき、規定が二つあります。
一つは労働基準法26条です。
労基法26条は「使用者の責めに帰すべき事由による休業」の場合、平均賃金(労基法12条)の60%以上の休業手当の支払を義務付けています。つまり、労基法26条が適用される場合は平均賃金の60%の支払が必要となります。
もう一つの規定が民法536条2項です。
民法536条2項は、債権者(使用者)の責めに帰すべき事由によって債務者が労務を提供できなくなったときは、使用者は反対給付を拒むことができない、と規定されており、これが適用されると働いていなくても100%の給与を支払う必要があります。

労働基準法だと労働者は60%しかもらえないのに、民法だと100%もらえるというのはちょっと不思議な感じがするかもしれません。この二つはどのように区別して適用するのでしょうか。
一般的に、労働基準法26条と民法536条2項の関係について、労基法26条の「責めに帰すべき事由」を民法536条2項にいう「使用者の責めに帰すべき事由」より広くとらえています。
まず、民法536条2項にいう債権者(使用者)の責めに帰すべき事由とは、一般的に、故意・過失又は信義則上これと同視すべき事由と言われており、限定的な場面に適用されます。
他方、労働基準法26条にいう「使用者の責めに帰すべき事由による休業」とは、使用者に故意・過失がなく防止が困難なものであって、使用者側の領域において生じたものといいうる、経営上の障害を含む、と解釈されています。簡単に言うと「故意・過失とまではいかないけれど、使用者側の都合で働けなかった」という場合になります。
そのため、例えば、会社の設備不良や仕事がない場合は、会社側の故意・過失により働くことが出来なかったという訳ではないため、労基法26条により60%の平均賃金の支給で足りることになります。
他方、会社が違法な手続で休職させていたような場合など、本来働くことが出来ていたにもかかわらず、会社の内部手続の手落ちにて働くことが出来なかったような場合は、民法536条2項が適用されることになります。

整理解雇が無効になった場合に会社が追うリスク

整理解雇が無効になった場合に会社が追うリスク

では、話を戻しまして、解雇が無効だと判断された場合、解雇から解雇無効と判断されるまでの間の給与はどうなるでしょうか。
これは、バック・ペイと呼ばれる問題です。
すなわち、解雇が違法と判断された場合は、解雇が無効になり、解雇の効力が遡ってなかったことになります。
そうなると、従業員は「働くことが出来たのに、働くことが出来なかった」として、その間の給料につき、民法536条2項により100%の給付を求めることが出来ます。
この支払いを、解雇の期間中遡って支払うことになり、これが一般的に「バックペイ」と呼ばれているのです。
前回のブログでもあげましたように、解雇手続が無効となる場合、例えば整理解雇の4要件(要素)のうち、人員削減の必要性がないと判断された場合は、解雇時から解雇無効と判断された期間の賃金を100%支払う必要があります。
このバックペイこそが、解雇について違法となった場合の会社側の最大のリスクといえます。会社の財源が赤字であるからこそ整理解雇を行ったにもかかわらず、解雇が無効となりさらにバックペイの義務まで負うとなると会社経営に与える影響は計り知れません。

コロナ禍がバックペイに与える影響の解説

コロナ禍がバックペイに与える影響の解説

では、解雇が無効であるとしても、バックペイの対象期間中にコロナ渦の影響を受けて、多数の従業員に休業命令を出していた場合はどうでしょうか。
つまり、会社が解雇していなかったとしても休業命令を出していた状況であるから、解雇無効となっても、休業命令の効果によって60%の給与額の支給になるのではないか、ということです。
この点について、判断を下したのが前回ご紹介した裁判例(センバ流通事件_仙台池決2020・8・21労判1236号63頁)です。
本決定は、Y社が「Xらを解雇していなかったとしても休業を命じる旨を主張している」ことから、Y社に民法536条2項の帰責事由がない場合に、仮払いを受けられる金額は、休業手当相当額にとどまる」、としたうえで、Xらの雇用継続は、Xらを休業させることが前提となっていること、Y社が2020年5月に稼働させた従業員は大半が最低賃金を超える歩合給になるような営業収入を上げることができておらず、新型コロナの影響によるタクシー利用役の減少は継続していることから、「仮に・・・解雇していなかったとしても、休業を命じることに民法536条2項の帰責事由がないことの疎明が」あったとして、休業手当相当額としています。
本決定はあくまで仮処分事案であり、法律上の証明ではなく疎明で足りることから必ずしも踏み込んだ検討がなされていないように思われる部分もありますが、コロナ禍での休業命令がバックペイに与える影響を判断しており非常に参考となる事例です。

ポイント

ポイント

会社経営の中で人件費削減の必要があり、やむを得ず整理解雇の方向へ舵を切ることはどこの会社であっても起こりうることですが、労働基準法や過去の裁判例などに照らし、有効性を満たしているかどうかをチェックすることは必ず行うべきことです。安易な整理解雇は会社にとってより大きなリスクを生じさせることになります。
そのため、弁護士法人ブレイスでは、普段から専門家へ気軽に相談できる体制を整える必要があると実感しています。
本稿をお読みの皆様におれかましても、お気軽にご相談ください。