ブレイスコラム

技能実習に潜むリスク~外国人雇用こそ労働関係法を厳守してください~

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ここ数年間、外国人雇用は増加傾向にあります。
一時期は新型コロナウイルス感染拡大の影響により減少した時期もありましたが、最近は留学生などの資格外活動や技能実習・特定技能による就労の増加が目立っています。弊所の顧問先様でも製造業や介護事業などで外国人雇用を見かけます。
本日は、技能実習による外国人雇用に潜むリスクを解説します。特に、自社の労働者が、日本人より、技能実習による外国人雇用の方が多い企業は、一発で倒産に追い込まれるリスクがあります。

【技能実習計画の認定の取消】

技能実習を行わせようとする者(実習実施者)は、技能実習計画を作成し、その技能実習計画が適当であるとの認定を受ける必要があります。
技能実習計画は、技能実習生ごとに、第1号、第2号、第3号のそれぞれの区分に応じて、認定を受けなければなりません。特に第3号技能実習計画については、実習実施者が、「技能等の修得等をさせる能力につき高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合していること」が必要です。
実習実施者は、認定を受けた技能実習計画に従って技能実習を行わせなければなりません。仮に違反があった場合には、改善命令や認定の取消しの対象になります。
<技能実習制度(団体管理型)の枠組み(JITCOのHPより抜粋)>

この技能実習計画の認定の取消は、外国人労働者(技能実習生)を受け入れている企業に大きな打撃となります。場合によれば、倒産に追い込まれることもありえます。

なぜなら、技能実習計画の認定を取消されると、その計画を実施できなくなることはもちろんとして、それ以外に以下のようなペナルティを受けることになります。

①計画の認定の取消の事実が公表され、事業者名が周知の事実となる(技能実習法16条2項)
②取消を受けた実習実施者が受け入れている全ての実習生が実習継続できなくなる
したがって、全ての実習生を解雇しなければなりません(なお、解雇予告手当の支払いが必要となります)
③取消を受けた日から5年間新たな技能実習計画の認定が受けられなくなる(技能実習法10条7号)


特に②③については、技能実習による外国人雇用が多い企業は、事業の継続が困難となり、一発で人出不足倒産に追い込まれます。
このように、外国人労働者(技能実習生)を受け入れている企業(技能実習実施者)にとって、技能実習計画の認定取消は特に避けなくてはなりません。

【外国人雇用こそ労働関係法を厳守してください】

それでは、どのような場合に、技能実習計画の認定取消が行われるのでしょうか?
 実際に公表されている事例を見てみると、以下の理由に認定取消されている例が多いです。
・労働安全衛生法違反により(罰金の刑に処せられ、これが確定)、出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたこと
・労働基準法違反により(罰金の刑に処せられ、これが確定)、出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたこと
・技能実習生の人権を著しく侵害する行為を行ったこと
・認定計画に従って賃金を支払っていなかったと認められること

これらの例を見ると、技能実習計画の認定取消の理由として、「労働関係法の違反」にかかわるものが多いことが分かります。労働基準法、労働安全衛生法、その他労働に関する法令です。「技能実習生の人権を著しく侵害する行為」の具体的内容は公表されていませんので推測になりますが、もしかしたらハラスメント(セクハラやパワハラ)なども含まれている可能性があります。


そもそも技能実習生に労基法等が適用されることを知らない方もいます。
労基法等労働関係法は、外国人・不法入国者・不法滞在者(在留資格を超えて活動している者を含む)であっても、雇用されて働いている場合には、日本人と同様に適用されます。技能実習生も労基法等労働関係法は適用されます(ただし、団体監理型の技能実習生が入国当初に受ける座学による講習期間中は、雇用されて働いているという実態にないため、適用されません)。そして、認定された技能実習計画に反して「残業」を行わせた場合、あるいは、(割増)賃金不払いは、指導や認定取消等の対象となる場合があります。
 
つまり、技能実習による外国人雇用を行っている企業様ほど、労働関連法の厳守を徹底してください。
さもなくば、技能実習計画の認定取消という恐ろしいペナルティが待ち受けています。

【労基法等に不安な方は専門家への相談をお勧めします】

このように技能実習などの外国人雇用を行っている場合、普段から労基法等労働関係法を遵守する体制を整える必要があります。ところが、多くの中小企業が、自社の状況を把握していない、把握したくても把握できない、ことがあります。
弁護士法人ブレイスでは、自社の労働関係遵守状況を確認するために「労務監査」サービスを提供しています。また、労働関係法が遵守できていない場合は、その改善のサポートを行っています。
労働トラブル対応の実績と経験を有する弊所だからこそ、その強みを活かした安心サポートを提供できます。

ご不安な方は、遠慮なく弊所までご相談ください。