ブレイスコラム

心理的負荷による精神障害の認定基準を改正 ~カスハラで労災申請が可能に~

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業務でうつ病などになった場合の労災認定基準が変わります。
厚生労働省は、「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、2023年9月1日付で厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました。
本改正は、近年の社会情勢の変化等に鑑み、最新の医学的知見を踏まえて「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討を行い、2023年7月に報告書が取りまとめられたことを受けたものです。
このコラムでは、本改正のポイントを確認します。

【カスタマーハラスメントの追加】

精神障害・自殺事案については、2011年に策定された「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づき労災認定が行われています。
労災認定にあたっては、実際に発生した業務による出来事を、「業務による心理的負荷評価表」に示す「具体的出来事」に当てはめ、負荷(ストレス)の強さを評価します。
本改正では、「具体的出来事」に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)が追加されました。

【どのような行為がカスハラに該当するのか?】

それでは、具体的にどのような行為がカスハラに該当するのでしょうか。
改正後の「心理的負荷による精神障害の認定基準」では、カスハラによる心理的負荷は、以下の視点から総合的に評価するとされています。

・迷惑行為に至る経緯や状況等
・迷惑行為の内容、程度、顧客等(相手方)との職務上の関係等
・反復・継続など執拗性の状況
・その後の業務への支障等
・会社の対応の有無及び内容、改善の状況等

そして、カスハラによる心理的負荷の強度(「強」・「中」・「弱」)を判断する具体例として、以下が挙げられています。

①「強」になる例
・顧客等から、治療を要する程度の暴行等を受けた
・顧客等から、暴行等を反復・継続するなどして執拗に受けた
・顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた
・顧客等から、威圧的な言動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を、反復・継続するなどして執拗に受けた
・心理的負荷としては「中」程度の迷惑行為を受けた場合であって、会社に相談しても又は会社が迷惑行為を把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった

 ②「中」である例
・顧客等から治療を要さない程度の暴行を受け、行為が反復・継続していない
・顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を受け、行為が反復・継続していない
・顧客等から、威圧的な言動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を受け、行為が反復・継続していない

 ③「弱」になる例
・顧客等から、「中」に至らない程度の言動を受けた

【カスハラ対応に不安な方は専門家への相談をお勧めします】

改正後の「心理的負荷による精神障害の認定基準」では、「会社の対応の有無及び内容、改善の状況等」も評価項目とされています。
従業員からカスハラの申告を受けた場合に備えて、会社としては、適切な対応を行えるような体制を整えておく必要があります。ところが、多くの中小企業が、このような体制を整えられていないのが現状です。
弁護士法人ブレイスは、労働トラブル対応の実績と経験を有しておりますので、その強みを活かした安心サポートを提供できます。

ご不安な方は、遠慮なく弊所までご相談ください。