ブレイスコラム

少人数勉強会実施のお知らせ

ブレイスコラム
令和5年8月、社労士向け少人数勉強会を実施しました!!
先般ご案内した「社労士“特化”顧問サービス」(詳細はコチラ)に関連して、社労士数名で少人数勉強会(リアル開催)を実施しました。令和5年8月3日は3名参加、8月29日は6名参加で実施しました。少人数ゆえに活発な質疑応答や意見交換がなされて、司会進行役の私(弁護士 渡邉直貴)も純粋に楽しい時間を過ごせました。
少人数勉強会で取り上げたテーマは「固定残業手当」でした。取り上げた判例は以下のとおりです。

⑴ 日本ケミカル事件最高裁判決
(最判平成30年7月19日裁判集民259号77頁)
⑵ 国際自動車事件第二次上告審判決
(最判令和2年3月30日民集74巻3号549頁)
⑶ 熊本総合運輸事件最高裁判決
(最判令和5年3月10日判決)

少人数勉強会に参加した社労士の先生方からは「普段のセミナー以上に突っ込んだ内容を双方向で学べるので良かったです。」といった、ありがたい声を頂戴しています。
さて、その勉強会で出たご質問について、未解決のものがありましたので、この場を借りて回答させていただきます。

【国際自動車事件】と【トールエクスプレスジャパン事件】(大高判令和3年2月25日 労判1239号5頁)の違いについて
国際自動車事件とトールエクスプレスジャパン事件は、業績に応じて計算された歩合給から割増賃金を控除することで、固定残業手当制度と同様に、一定の範囲で残業しても手取り額が増えない給与体系を採用する点では共通します。しかし、国際自動車事件第二次上告審判決はこのような給与体系を違法と判断し、トールエクスプレスジャパン事件判決は適法と判断しました。

両事件における判断の相違は、両社の給与体系の違いから生じたと考えられます。
すなわち、国際自動車事件の給与体系では、業績に応じて計算された歩合給の算出基礎(対象額A)から、基本給等に対する割増賃金(割増金)と歩合給算出基礎(対象額A)に対する割増賃金(割増金)の合計額を減額して、歩合給(歩合給⑴)を計算します。そのため、減額によって歩合給の本体部分が支払われなくなる場合に、その歩合給に対する割増賃金だけが支払われる事態が生じます。最高裁は、この点を問題点として指摘しました。

【国際自動車事件】


(引用元:2021.5.15産労総合研究所発行・労働判例第1239号9頁)

これに対し、トールエクスプレスジャパン事件の給与体系では、業績に応じて計算された歩合給の算出基礎(賃金対象額)から、基本給(基準内賃金(能率手当除く))に対する割増賃金(時間外手当A)のみを減額した金額を歩合給(能率手当)として確定し、この確定した歩合給(能率手当)を基礎に、歩合給に対する割増賃金(時間外手当B)を計算します。そのため、歩合給の本体部分が支払われずにその歩合給に対する割増賃金だけが支払われる事態は生じません。

【トールエクスプレスジャパン事件】


(引用元:2021.5.15産労総合研究所発行・労働判例第1239号9頁)

両事件で判断が分かれたのは、このような給与体系の違いが原因と解されています。
もっとも、両判決を参照しても、業績に応じて計算された歩合給から割増賃金を減額する給与体系を採用する場合にどのような点に留意すべきかについて、必ずしも明確になっておりません。今後も、裁判例の動向を注視する必要がありそうです。
弁護士法人ブレイスは、未払残業代トラブル対応の実績と経験を有しており、最新裁判例の動向も踏まえたサポートを提供できます。
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