ブレイスコラム

職種限定社員の配置転換

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2024年4月26日、最高裁は、労使間で職種限定合意がある場合に、使用者が労働者の同意なしに配置転換を命じる権限はないとする初判断を示しました。
当該従業員が従事していた業務に関し、受注減少を理由に廃止の方針があった中、会社が、当該従業員を欠員のあった別事業部へ合意なく配置転換したことから、その適法性が争われたものです。
以下のコラムでは、上記最高裁判例について解説します。

配置転換の背景

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当該従業員は、2001年から、社会福祉協議会が運営する福祉施設で福祉用具を扱う技術職として働いていました。しかし、2019年3月、事前の打診なく、総務課の施設担当係に配転する人事を内示されました。その背景には、受注減少により、施設での福祉用具の製作業務を廃止する方針があったこと、異動先の総務課で欠員が生じていたことなどがありました。

当該従業員は、配置変更の際に合意がなかったことを理由に人事の撤回を求めましたが、協議会側に受け入れられず、退職しました。

協議会側は、配置転換に関し、「需要がなくなる技師として勤務させ続ける経営上の合理性はなかった」として、その適法性を主張しました。これに対し、従業員側は、「労働契約で職種を限定していた状況下では、協議会側は同意なしに技術職から総務課へと職種を変えることは許されない」と反論しました。

一審・二審の判断と、最高裁の判断

一審・二審ともに、当該従業員と協議会側との間で、技術職として就労させる旨の職種限定合意があったことを認定しました。その一方で、施設では当該従業員が従事していた技術職の業務が廃止される方針だったことから、配置命令には解雇回避の目的があったと判断しました。総務課への異動は業務上必要で、合理的な理由があったとして配転命令を有効としました。

しかし、最高裁判決では、原判決が破棄され、差し戻しとなりました。最高裁は、職種限定合意があった中では、協議会側は、「配置転換に関する同意を得ずに、総務課施設管理担当への配置転換を命ずる権限をそもそも有していなかった」と判断しました。その結果、「協議会側が配転命令をする権限を有していたこと」を前提に判断した二審判決を覆す形となり、本件配置転換が損害賠償の対象となり得るかなどを再度審理させるため、大阪高裁に差し戻す決定を下しました。

最高裁判決の評価

今回、協議会側としては、解雇を回避するための手段として配置転換を行った側面も多少なりともあったと推測されますが、職種限定合意がある中では、使用者側に労働者の同意なく配置転換する権限がないことが明確になりました。

今後、実務的には、職種限定合意がある労働者に対し、丁寧に配置転換の同意を求めたうえで、どうしても同意が得られない場合に、退職勧奨または整理解雇を検討するという流れとなりそうです。

職種限定社員の配置転換は専門家への相談をお勧めします

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今回の最高裁判決は、労働契約についてのルールが変わる時流の中で下されました。労働者に対する条件の明示と、条件変更の際の丁寧な同意取得が重要になりそうです。
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