ブレイスコラム
法人破産についてのギモン4
- 法人破産をした後は、代表者は仕事をしてもいいのですか?
- 法人破産をした場合、代表者は生活保護や年金を受給できますか?
- 法人破産をした場合、誰に分かりますか?
- ・会社が消滅する
- ・従業員を解雇しなければならない
- ・官報で公告される
- ・約5~7年間にわたりクレジットカードを持つことや車のローンなどを組むことができなくなる
- ・税金に関しては免責されない
- ・20万円以上の財産は処分される
- ・特定の職につくことができなくなる(資格喪失)
はじめに
コロナ融資の返済が開始した影響か、法人の債務整理の相談が増えています。 br>
債務整理の代表が破産手続ですが、「破産」という言葉に強い抵抗を感じる経営者様は多くいらっしゃいます。 br>前回のコラムに引き続き、今回も、法人破産をした場合の代表者自身への影響を中心に、皆様が気になると思われるトピックをピックアップして、より詳しく解説します。
法人破産をした後は、代表者は仕事をしてもいいのですか?
法人破産の手続中又は手続後であっても、代表者は他の会社に就職し、働くことができます。
また、会社は法人破産する必要はないものの、代表者個人が自己破産された場合、自己破産した代表者は会社で仕事を続けられるのか、についてもご説明いたします。(代表)取締役は会社と委任契約を締結しているとされるところ、「委任者又は受任者が破産手続の開始決定を受けたこと」が委任の終了事由として規定されています(民法653条2項)。
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したがって、自己破産した取締役は破産手続の開始決定を受けたことにより委任が終了し、一旦取締役の地位を失います。しかし、当該破産者を取締役に再度選任することを妨げる規定はないので、法律上取締役への再任は可能ということになり、再任されれば引き続き(代表)取締役として業務を執行できます。
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さらに、2つの法人を経営されていて一方の会社は法人破産し、もう一方の会社は残され、代表者が自己破産する場合も、上記のとおり一旦残される方の会社代表取締役の地位は失われるものの、残される方の会社の(代表)取締役に再任することは法律上可能となります。
法人破産をした場合、代表者は生活保護や年金を受給できますか?
法人破産や自己破産により生活保護や年金を受給できなくなってしまうのではないかと不安に思う方も少なからずいらっしゃるかと思います。
まず、生活保護に関しては、生活保護法4条に記載されております受給要件をみたせば受給が可能であり、「破産手続の開始決定を受けていないこと」といった要件はなく、また生活保護受給の欠格事由にもあたりません。
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次に、年金に関しましても、国民年金や厚生年金などの公的年金については、差押禁止債権にあたるため、自己破産しても受給することが可能となります。また、法人破産した場合で、会社で掛けていた厚生年金に関しましても、直接の影響はございません。法人破産後、就職される場合は、就職先で年金手帳を提出し、厚生年金に入る手続きをしてもらうことができます。また、法人破産後すぐに就職されない場合であっても、国民年金への加入手続きをしていただければ問題ありません。
法人破産をした場合、誰に分かりますか?
まず、法人破産及び自己破産した際のデメリットとして挙げられるのは以下のとおりとなります。
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このうち、官報には法人破産の事実や代表者個人名、代表者が自己破産された場合は代表者の住所なども記載されます。
<破産手続開始決定時の官報掲載例>
令和6年(フ)第●●●号
大阪市北区野崎町〇丁目〇番〇号
債務者 株式会社〇〇
代表者代表取締役 ●● ××
1 決定年月日時 令和6年11月20日午前10時
2 主文 債務者について破産手続を開始する。
3 破産管財人 弁護士 ●● ××
4 財産状況報告集会・廃止意見聴取・計算報告書の期日 令和7年2月13日午後1時30分
大阪地方裁判所第6民事部
よって官報をご覧になられた方には知られることになります。官報を閲覧しようと思えば誰でも閲覧することができるので、破産の事実を知られる可能性がないとはいえません。もっとも、一般の方が、官報の破産情報を読むことはほぼありませんので、官報から破産の事実を知るということはあまり考えられないとも思われます。
また、会社取引先や個人的に金銭を借りている知人・友人等には、破産手続につき弁護士に依頼した場合、受任通知を送付することとなるので、知られることとなります。ご家族に関しましても、前回コラムのとおり、自宅や車の引き上げなどの事情や、ご家族が連帯保証人となっている場合には、破産の事実を知られることとなります。
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おわりに
これまで4回にわたり「法人破産についてのギモン」と題し連載してきましたが、今回が最終回となります。一通り、皆さまが特に気になられる点について解説してきましたがいかがだったでしょうか。
法人破産は、従業員や取引先など利害関係人が多数に上る一方、迅速な申立てが要求されるケースも多いため、法人破産の実績がある法律事務所へ委任することをお勧めします。
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