ブレイスコラム
カスタマーハラスメントについて
※2024年7月31日更新
はじめに
2022年4月以降、大企業だけでなく中小企業においても、職場におけるハラスメント防止措置が義務化されました。企業はハラスメントを防止するために事業主の指針の発表、研修などによる社内周知、ハラスメント相談体制の整備などをしなければなりません。
カスタマーハラスメントについても、厚生労働省の「パワーハラスメント防止のための指針」では、「カスタマーハラスメントに関して、事業主は、相談に応じ、適切な対応をするための体制の整備や被害者への配慮の取組を行うことが望ましい」とされております。また、厚生労働省から、2022年2月25日には「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が作成され、2023年9月1日、業務でうつ病などになった場合の労災認定基準においてカスタマーハラスメントが追加されました。
そのような流れの中、このたびJRグループがカスタマーハラスメント(カスハラ)に対する方針を公表し話題となっています。
以下、今後のカスハラ対策の方針策定について解説します。
方針の構成
カスタマーハラスメントの指針・方針は主に「①基本姿勢」「②定義と例示」「③企業としての対応」で構成されます。つまり、まずは①カスハラには毅然として対応する旨を謳い、②何がカスハラに当たるかを具体的に社内外に示し、③それらのハラスメントに対してどう対応するかを説明し、これらについて従業員や顧客に対しての周知徹底を行う必要があります。
例:JRのカスハラ対策方針
たとえば、JR東日本のカスハラに対する方針は、次のようになっています。(一部抜粋)
① 基本方針
「カスタマーハラスメントに該当する行為に対しては、毅然とした対応を行い、グループで働く社員一人ひとりを守ることも、継続的に安全で質の高いサービスを提供していくためには不可欠と考え」とあり、カスハラには毅然とした対応をする旨が宣言されています。
② 定義と例示
カスハラの定義:「お客さまからのクレーム・言動のうち、要求内容の妥当性が認められないもの又はその妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであり、当社グループで働く社員の就業環境が害されるおそれがあるもの」とあります。そして、具体的なカスハラ行為として以下が例示されています。
身体的、精神的な攻撃や威圧的な言動/継続的な言動、執拗な言動/土下座の要求/拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)/差別的な言動、性的な言動/当社グループで働く社員個人への攻撃や要求/当社グループで働く社員の個人情報等のSNS・インターネット等への投稿(写真、音声、映像の公開)/不合理又は過剰なサービスの提供の要求/正当な理由のない商品交換、金銭補償の要求、謝罪の要求
鉄道会社ではしばしば駅員に対する暴力・暴言などの迷惑行為が取り上げられますが、それらは明確にカスハラであると定義されています。
③ 企業の対応
「カスタマーハラスメントが行われた場合には、お客さまへの対応をいたしません。さらに、悪質と判断される行為を認めた場合は、警察・弁護士等のしかるべき機関に相談のうえ、厳正に対処します」とあるように、社員に対しても客として対応不要であると書かれています。
カスハラ対策方針を示す意味
カスハラ対策方針を社内外に示すことで、会社が社員をカスハラから守るという意思を表明できます。このような会社としての断固たる意思を表明することにより、顧客によるカスタマーハラスメントを未然に防止し、社員の離職を防止する効果が期待できます。まだ取り組んでいない企業様はは、ぜひメッセージを発信してみてください。
その他、最近のカスタマーハラスメント対策の動向
カスタマーハラスメント対策企業マニュアルが示されました
2022年2月25日、厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が示されました。マニュアルには、学識経験者等の議論や顧客と接することが多い企業へのヒアリングを踏まえ、カスタマーハラスメントを想定した事前の準備、実際に起こった際の対応など、カスタマーハラスメント対策の基本的な枠組みが記載されています。
いずれも厚生労働省ホームページからダウンロードできます。企業のご担当者様や社会保険労務士の先生方は是非とも活用してください。
参考:厚生労働省 「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を作成しました!」
業務でうつ病などになった場合の労災認定基準にカスタマーハラスメントが追加されました
2023年9月1日、業務でうつ病などになった場合の労災認定基準においてカスタマーハラスメントが追加されました。厚生労働省は、「心理的負荷による精神障害の認定基準」を改正し、2023年9月1日付で厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました。本改正は、近年の社会情勢の変化等に鑑み、最新の医学的知見を踏まえて「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討を行い、2023年7月に報告書が取りまとめられたことを受けたものです。
精神障害・自殺事案については、2011年に策定された「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づき労災認定が行われています。労災認定にあたっては、実際に発生した業務による出来事を、「業務による心理的負荷評価表」に示す「具体的出来事」に当てはめ、負荷(ストレス)の強さを評価します。
本改正では、「具体的出来事」に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)が追加されました。
カスハラ対応のセミナーを実施します!(9月19日)
改正後の「心理的負荷による精神障害の認定基準」では、「会社の対応の有無及び内容、改善の状況等」も評価項目とされています。従業員からカスハラの申告を受けた場合に備えて、会社としては、適切な対応を行えるような体制を整えておく必要があります。ところが、多くの中小企業が、このような体制を整えられていないのが現状です。また、実際のカスハラに直面したときに、顧客サービスとの線引きの難しさ、正当なクレームとの区別の難しさ、実際の対応の難しさから、どうしたらよいか分からないまま手が付けられない企業も多数存在すると思われます。
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当日の講座のあらまし
- ① カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?
カスハラの定義や具体例、カスハラか否かの判断基準を解説 - ② カスタマーハラスメントと企業の責任を巡る裁判例
カスハラ対策を取り組んだか否かで結論が分かれた裁判例を解説 - ③ 企業が取るべきカスタマーハラスメント対策
相談対応体制、初期対応での留意点、従業員への配慮の措置などを解説 - ④ カスタマーハラスメントの行為別対応例
ブレイスが担当した実際のカスハラに対する対応例を行為別に解説
セミナーでは、以下の参加特典もございます。奮ってご参加ください。
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- カスタマーハラスメントに対する基本方針、社内周知文書、カスハラ顧客への警告書などの各種書式のデータ提供